会いたい
「おっと、先客がいたか……」
ジープでの移動中、昼食後の休憩で、昼寝をするのに日射しを避けようと悟浄が選んだ木陰には、既にうたた寝をしているの姿があった。
(ひとりってのは珍しいな……)
見渡してみれば、三蔵は少し離れた場所で八戒と共にこちらに背をむけ、ジープのボンネットに広げた地図を見ながら、なにやら相談中。
悟空は別の木陰に寝転んでいた。
(……それにしても、コイツはどこででもよく寝るよな……)
木の幹にもたれて、気持ち良さそうに寝息を立てているに目を戻すと、シャツの襟の隙間から赤い跡が見えた。
(なるほど……昨夜もなかなか眠らせてもらえなかったワケね……)
溜息をついて隣に座る。
女の寝顔を眺めるなんて悪趣味だとわかっているが、なんとなく目が離せない。
( ? )
ふいに眠っているの唇の両端が僅かに上がった。
(笑ってるよ……どんな夢見てんのかねえ?)
ハイライトを咥え、ライターを探していると、その呟きが耳に入った。
「さんぞう……」
ピキッ!
こめかみに青筋が浮いたのが自分でわかる。
口からタバコが落ちた。
(あー、そーかい! そーゆー夢を見て、そんな倖せそーな顔してんだな!!)
に対して腹を立てるのは筋違いだということはわかっている。
三蔵に対してムカつくのも、単なるヤキモチだ。
でも、頭ではわかっていても、気持ちはそうはいかない。
の心も身体も手に入れて、その上、夢の中まで独占するなんて、とうてい許せない。
(邪魔してやりてー……)
しかし、ここでを起こしてしまうのは、あまりに自分が情けない。
そして、ふと思いついた。
起こさないように気をつけながら、そっと、の両の瞼に口付け、軽く息を吹き込んだ。
……どうか、届いて欲しい……
そう、祈りを込めて。
君のもとに、俺は行けるだろうか?
君は俺を、見つけてくれるだろうか?
……君の夢の中で、君に会いたい。
end