仕草

三人が買出しに行き、と二人残された宿の部屋で、新聞をめくりながらも三蔵はその活字に集中できないでいた。

最近、気になることがある。

癖になっているのか、日に何度も繰り返されるの仕草。

別に物音を立てるわけでもなく、他人を巻き込むわけでも、不快感を与えられるようなものでもない、ごく小さな動き。

気になるのは、その時の表情だ。

優しく穏やかな笑顔を浮かべ、愛おしむように、慈しむように、握りしめた左手を、右の掌で包み込むように撫でる。

そして、今も、また……

「何を考えている?」

「ん? 別に何も? ちょっと、ぼーっとしてたかも」

「ヒマなら茶でも淹れ直せ」

「うん、ちょっと待ってね」

無意識のうちにでもしてしまうのが癖だ。

それに、気にはなるが、正直、柔らかい空気に包まれたあの姿を見るのは嫌いではない。

直せというつもりもないのだが……

「はい」

テーブルに差し出された湯呑みに口をつける。

「おいしい?」

向かいに座って、テーブルに両肘をついて、訊いてくる笑顔。

「……奴らが淹れたのよりはな……」

言ってやると、花がほころぶように笑った。

そして、また、あの表情で左手を撫でる。

何故か、とても気になるのだ。

のこの仕草が……

end

Postscript

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